個別株分析 – 物語コーポレーション 2024年6月期決算を受けて

 2024年6月期第3四半期決算を受け、株価が直近高値5,450円(’24/1)から3,680円(▲33%)へ下落しました。 直近高値の株価5,450円(’24/1)においては、予想PER 34倍、PBR 7.35倍と、成長株特有の割高な値となっています。

 決算の内容自体は、売上高/純利益ともに前期比+17%以上の成長率となっており申し分ないですが、ここ2年ほどの期間で株価も急激に上昇しています(2023年1月の終値 2,166円→2024年1月の高値 5,450円)。
 上記のような急激な株価変動から、おそらく成長要因を過剰に取り込んでおり、また後述の投資価値の推計からすれば、直近半年間の株価は投機的な要因に大きく影響を受けていた可能性があると思われます。

<投資価値の推計について>
 2017年以降のROEは15~17%(コロナ感染防止期間を除く)、平常時の総還元性向は約20%より、 成長率は約13%と推計されます。 長期的なS&P500の年率リターンが8%程度の水準であることを踏まえると、当社の成長率13%は大変魅力的です。一方で、店舗数増加等による売上高増加を原動力として、いつまで成長率を維持できるかが重要な要因となってきます。当然ですが、ある時点で出店店舗数の限界を迎え、成長率が鈍化するものと考えられますが、この時期が早いほど理論株価は低く、遅いほど高いと考えることができます。
 投資価値理論に示される配当割引モデル(*ジョン・ウィリアムス『投資価値理論』を参照)によると、現在の株価 3,680円においては25年間、上記の13%の成長率を続けることが織り込まれていると考えられます(25年目を変曲点として、徐々に成長は鈍化する) 。
 ちなみに、2024年1月の高値 5,450円においては、同様の計算をすると同じ13%の成長率で32年間の成長を織り込んでいたことになります。
 これらの成長率及び期間はどれだけ妥当なのでしょうか。

 2023年6月期決算及び2024年6月期第3四半期報告によると、直近の売上高増加率は要因別に、既存店 年率+10%程度、新規出店 年率+5~10%程度と思われます。 最低でも成長率相当(13%程度)の売上高増加率は確保したいのですが、既存店売上高成長は単価上昇または効率化によるコスト低減となり限度があるものと考えております。したがって、できれば新規出店による成長要因を重視したいところです。
 もしも25年間、年率+5~10%の店舗増加を続けた際の店舗数推移は、
・焼肉部門  :(現在) 305 → (25年後)1,033~3,305
・ラーメン部門:(現在) 201 → (25年後)681~2,178
・ゆず庵部門 :(現在) 94  → (25年後)318~1,018
 *店舗増加率 年率+5~10%で計算、それぞれの部門の主力ブランドは、焼肉部門:焼肉キング、ラーメン:丸源ラーメンとなります。
 2023年7月時点の焼肉チェーン全国店舗数は2,955店舗、対前年増加率は0.01%であり、 焼肉部門が年率+10%の成長を続け、25年後に3,305店を出店する可能性は限りなく低いと考えられます。2023年6月期の店舗増加率は対前年で+6.6%ですが、もしこの増加率を25年間続けた場合でも最終的に1,507店舗と、シェアを50%以上とする必要があり、25年間同じ成長率を維持するのは難しいと考えられます。
 ラーメン部門においては年率+10%の店舗数増加で、25年後には2,178店舗となります。同業他社の出店数では、リンガーハットが約560店、日高屋が約440店であることを考えると非常に多いです(*ただし日高屋は関東地方のみ、1県あたり約70~80店であり、全国2,178店は1県あたり約46店ということを考えれば、日高屋の半分程度の密度で出店することになります)。また、2023年6月期の店舗数増加率が+5.8%となっております。この増加率を25年間維持した場合、最終的な店舗数は823店舗(1県あたり17.5店)となります。この水準であれば、数字上では増加率に余裕があると考えられますが、 ロードサイド主体の出店形態から駅前出店のトライアルを実施しているとのことで、 この成否次第で状況が変わるとも考えられ、引き続き注視が必要となります。
 お好み焼き及びゆず庵部門は、実績として直近1~2年はあまり変動がないです。
 新規ブランドである専門店部門は積極的なトライアル・展開を進めていますが、まだ全体の利益率に貢献するほどの規模の業態ではないです。ただし、今後の利益成長ドライバーとして重要な要素であるため、個々の利益成長は関心が高い部分でもあります。
 参考までに、仮に新ブランドが台頭せず、既存の主力ブランドのみで年率+10%の利益成長を25年間継続する前提においては、投資価値は1株あたり1950円程度となりますので、PER 12倍程度が妥当ということになってしまいます。

<まとめ>
 総じて、現在の株価水準(3,700円前後)は、既存の主力業態である焼肉、ラーメン、ゆず庵部門の成長要因のみでは割高と思われます。専門店部門として新規ブランドの育成に取り組んでおり、また海外部門においても新ブランドのトライアルを実施しているため、これらの成否が将来の利益成長率の変動要因となると考えられます。決算報告においても新ブランド育成状況については注目したい部分です。
 また私見ですが、このような成長株への投資は将来の変動要因が大きく、将来利益の見積りが困難であることから、より堅実に投資をするのであればバリュー株も含めた分散されたポートフォリオを組み、過剰な期待が織り込まれている可能性のある銘柄は除外すべきであると思います。

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